「英語、そろそろやらせなきゃいけないかな……」
4歳と7歳の息子を育てていると、周りのお友達が英会話教室に通い始めたり、通信教材を始めたりする話を聞くたびに、どうしても焦りを感じてしまいます。将来の選択肢を広げてあげたい、学校の授業で困ってほしくない。親心としては当然の願いですよね。
でも、いざ「英語やってみる?」と子供に聞いてみると、「えー、やだ!」「英語きらい!」なんて即答されてしまって、ガックリ……なんてこと、ありませんか?
無理にやらせて余計に嫌いになってしまったら本末転倒だし、かといって、このまま何もせずに小学生、中学生になって本当に大丈夫なのかという不安も消えません。「やらせたいけれど、無理強いはしたくない」。この葛藤は、多くのママ・パパが抱える共通の悩みです。
私自身、長男が小学校に入り、宿題や勉強の時間が増える中で、「学び」と「遊び」の境界線について考えることが増えました。そこで注目したのが、子供たちが大好きな「ゲーム」という切り口です。
もし、英語が「勉強」ではなく、攻略すべき「楽しいゲーム」の一部だとしたら?
今回は、英語に苦手意識を持ってしまったお子さんや、勉強アレルギー予備軍のお子さんに向けて、従来の「お勉強」とは少し違う、ゲームを通じた英語との距離の縮め方について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
目次
なぜ英語が「苦手」「嫌い」になってしまうのか
子供にとって、本来新しい言葉を知ることは「これなに?」「あれなに?」という好奇心の延長にあるはずです。それなのに、なぜ「英語」という教科になった途端に、苦手意識や拒否反応を示してしまうのでしょうか。
まずは、子供たちが英語を「嫌い」と感じてしまうメカニズムについて、親として冷静に紐解いてみましょう。ここを理解せずにツールだけ変えても、根本的な解決にはならないからです。
英語=勉強というイメージの正体
「英語=机に座って静かに聞くもの」「先生の後についてリピートさせられるもの」。もしお子さんが英語に対してこんなイメージを持っていたら、それはもう「遊び」ではなく「義務」になっています。
特に活動的な男の子や、じっとしているのが苦手な子にとって、動きを封じられて意味のわからない言葉を聞き続ける時間は苦痛でしかありません。私たちが良かれと思って選んだ教室や教材が、知らず知らずのうちに「英語は退屈な勉強である」という刷り込みを行ってしまっている可能性があります。楽しさよりも「正しさ」や「規律」が優先された瞬間、子供の心のシャッターは下りてしまうのです。
できない経験が苦手意識を作る
大人は「間違えてもいいんだよ」と言いますが、子供、特にプライドが芽生え始めた小学生くらいの子にとって、「わからない」「答えられない」という経験は大きなストレスです。
例えば、急に「What's your name?」と聞かれて、どう答えていいかわからず固まってしまった経験。周りの子は答えているのに自分だけ言えなかった恥ずかしさ。こうした小さな「失敗体験」の積み重ねが、「僕は英語ができない」「英語は怖い」という自己認識(セルフイメージ)を強固にしてしまいます。一度「苦手」というラベルを自分に貼ってしまうと、そこから抜け出すのには大変なエネルギーが必要になります。
早く始めても合わないケースがある理由
「英語耳を作るなら早ければ早いほどいい」という説はよく聞きますし、一理あります。しかし、すべての子供に当てはまるわけではありません。
日本語でのコミュニケーションやおしゃべりが大好きな子がいる一方で、言葉に対して慎重な子もいます。母語である日本語の土台がまだ不安定な時期に、わけのわからない第二言語が大量に入ってくることを「不安」と感じる子もいるのです。発達段階や性格によっては、早期教育が逆に混乱やストレスを招き、英語そのものを遠ざける原因になることも。周りの「早期教育ブーム」に流されず、我が子のタイミングを見極める視点が必要です。
親の期待がプレッシャーになる瞬間
ここが一番耳の痛い話かもしれませんが、親の「期待の眼差し」こそが、子供を追い詰めているケースが少なくありません。
英語のアニメを見せている時に「今の単語、なんて言ったかわかる?」と確認したり、教室の帰りに「今日は何習ったの? 言ってみて」とテストしたりしていませんか? 私もついやってしまいがちです。でも、子供にしてみれば、常に親から評価されているような息苦しさを感じてしまいます。「楽しんでほしい」と言いながら、実は「成果」を求めている親の矛盾を、子供は敏感に察知します。このプレッシャーが、英語を「親のための義務」に変えてしまうのです。
ゲームはなぜ夢中になれるのか
「宿題やりなさい!」と言っても全然動かないのに、ゲームとなると何時間でも集中している……。我が家でも日常茶飯事の光景です(笑)。
親としては「その集中力を少しでも勉強に向けてくれたらいいのに」とため息をつきたくなりますが、そもそもなぜ子供たちはそこまでゲームに夢中になるのでしょうか?
実はゲームの中には、人が「学び」「成長する」ための本質的な仕組みが隠されています。これを理解すると、英語学習へのヒントが見えてきます。
ゲームに自然と集中できる理由
ゲームが子供を惹きつける最大の理由は、「目的とフィードバックが明確だから」です。
「この敵を倒す」「ゴールまで走る」といったやるべきことがはっきりしていて、ボタンを押せばすぐに反応(ジャンプする、音が鳴る)が返ってきます。
一方、勉強はどうでしょうか。「将来のために英語を覚えよう」と言われても、子供には遠すぎて実感が湧きません。自分がやったことに対して、すぐに「結果」が見える。このスピード感が、子供の脳にとって心地よい刺激となり、自然と集中状態(フロー状態)を作り出しているのです。
失敗しても怒られない設計
勉強では間違えると「バツ(×)」をつけられ、直され、時には叱られます。でも、ゲームの世界ではどうでしょう。
マリオが穴に落ちても、ゲームオーバーになっても、誰からも怒られません。「あー、失敗した! もう一回!」と、すぐに再挑戦(リトライ)できますよね。
ゲームにおける失敗は「ダメなこと」ではなく、「攻略のためのデータ収集」に過ぎません。「ここで行くと落ちるから、次はジャンプしよう」と、子供たちは失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返します。この「心理的安全性」があるからこそ、何度でも能動的にチャレンジできるのです。
できた実感・レベルアップの仕組み
ゲームは絶妙なバランスで作られています。最初は簡単にクリアできて「僕、できる!」という自信を持たせ、徐々に難易度が上がっていきます。
そして、クリアするたびにレベルアップの音が鳴ったり、新しいアイテムがもらえたりして、成長が可視化されます。
- スモールステップ: 階段を一段ずつ登るように難易度が上がる
- 報酬: 頑張りがすぐに認められる
この仕組みにより、子供は「自分は成長している」という効力感(自己肯定感)を常に感じ続けることができます。「勉強しなさい」と言われなくても、自分から次のステージへ進みたくなるのはこのためです。
勉強との決定的な違い
従来の勉強とゲームの決定的な違いは、「受動的か、能動的か」にあります。
勉強は「やらされるもの」「正解を覚えるもの」になりがちですが、ゲームは「自分で操作するもの」「攻略法を見つけるもの」です。
子供は本能的に「自分でコントロールしたい」という欲求を持っています。英語学習においても、ただ座って聞く「受け身」の姿勢から、自分で選んで操作する「能動的」な姿勢に切り替えることができれば、子供の目の色は驚くほど変わります。ゲームはそのスイッチを入れるための強力なツールになり得るのです。
「楽しい」が続くと、学びは変わる
「でも、ゲームで遊んでいるだけで本当に英語が身につくの?」
そんな疑問も当然浮かびますよね。確かに、ゲームをしたからといって、すぐにペラペラ話せるようになるわけではありません。
しかし、英語に対する「感情」が変わることは、長期的に見てスキル習得以上の価値があります。
モチベーションと継続の関係
語学学習において最も重要なのは「継続」です。どんなに優れた教材でも、3日で辞めてしまえば意味がありません。逆に、多少効率が悪くても、毎日楽しく触れ続けていれば、必ず力になります。
「勉強しなさい」と言われて嫌々やる30分と、「楽しいからもっとやりたい!」と没頭する30分。脳の吸収率は雲泥の差です。「英語=楽しい時間」というポジティブな記憶が刻まれれば、子供は自分から英語に触れようとします。この「自走するエンジン」を作ることこそが、初期段階における最大の目標です。
自然に触れる英語のメリット
ゲームを通じて英語に触れるメリットは、「文脈の中で言葉を覚えられる」ことです。
単語帳で「Apple = りんご」と暗記するのは退屈ですが、ゲームの中で体力が減った時に「Appleを食べたら回復した!」という体験をすれば、「Apple」はただの文字記号ではなく、「回復アイテム」としての意味を持つ生きた言葉になります。
「Jump」と言われたらキャラが跳ねる、「Attack」で攻撃する。動作や映像とセットでインプットされるため、日本語に訳さず、英語を英語のまま感覚的に理解する土台が育ちます。
聞く・話すに慣れるまでのプロセス
多くの英語対応ゲームやアプリでは、ネイティブの発音が流れます。
子供の耳は柔軟なので、ゲームの効果音と同じように英語のフレーズをコピーしてしまいます。「Get ready!」「Good job!」など、ゲーム内で繰り返される短いフレーズを、意味もわからず口ずさんでいるのを見たことはありませんか?
最初はそれで十分です。「意味を理解する」よりも先に「音に慣れる」。この順序は、赤ちゃんが言葉を覚えるプロセスと同じ。勉強として構えることなく、遊びの中で大量の英語の音を浴びる(シャワーを浴びる)環境が、後のリスニング力や発音の良さにつながっていきます。
勉強にしないことの意味
親としてはつい、「今の単語覚えた?」「意味わかってる?」と確認したくなりますが、ここではグッと我慢です(笑)。
ゲームを「教材」として扱った瞬間、子供はそれを「隠された勉強」と見抜き、警戒します。
あくまで目的は「ゲームを楽しむこと」。英語はそのための「ツール(道具)」に過ぎません。「英語を勉強するためにゲームをする」のではなく、「ゲームをしていたら結果的に英語にも触れていた」。この主従関係を崩さないことが、英語アレルギーのお子さんにとっては特に重要です。「勉強にしない」という戦略が、結果として「学び」への最短ルートになることもあるのです。
ゲーム×英語という選択肢をどう見るか
ここまで「ゲームの良さ」をお伝えしてきましたが、親としては冷静な視点も必要です。
「ゲームさえ与えておけば英語がペラペラになる」なんて魔法のような話はありません。メリットがあれば、当然向き不向きや限界もあります。
ここでは、一歩引いた視点で「ゲーム×英語」という選択肢をどう捉えるべきか、私の考えを正直にお話しします。
向いている子・向いていない子
すべての子にこの方法がハマるわけではありません。
例えば、視覚的な情報処理が得意な子や、負けず嫌いでクリアすることに燃えるタイプの子には、ゲーム学習は非常に効果的です。特に男の子はハマりやすい傾向があります。
一方で、画面よりも対人コミュニケーションを好む子や、じっくり静かに物語を読みたいタイプの子には、ゲームのスピード感が「忙しない」「疲れる」と感じられることもあります。「英語=ゲーム」と決めつけず、お子さんが「何に一番夢中になるか」を観察することが大切です。無理にゲームをやらせるのも、また一つの「押し付け」になってしまいますから。
親が誤解しやすいポイント
よくある誤解が、「ゲームをやっている時間は勉強時間」とカウントしてしまうことです。
確かに英語には触れていますが、その密度は机に向かう学習とは異なります。「今日は1時間もゲーム(英語)やったから、これで勉強はおしまい!」としてしまうと、読み書き(ライティングやリーディング)の力はなかなか育ちません。
ゲームで得られるのは、あくまで「英語への親しみ」や「リスニングの基礎」「語彙のきっかけ」です。文法を体系的に学んだり、長文を読解したりする力は、また別のトレーニングが必要です。ゲームは万能薬ではなく、「特効薬(きっかけ作り)」だと割り切るくらいがちょうど良いでしょう。
過度な期待を持たないために
「高い教材アプリを買ったんだから、元を取ってよ!」
そんな気持ち、すごくわかります(笑)。でも、過度な期待は子供に伝わります。親が「学習効果」を血眼になって探していると、子供はそれを敏感に察知し、純粋に楽しめなくなります。
「楽しかったらラッキー」「英語を嫌いじゃなくなれば儲けもの」。
これくらいの軽いスタンスでいる方が、結果的に子供はのびのびと英語に触れられます。投資対効果(コスパ)を焦って求めないことが、長く続ける秘訣です。
あくまで「入口」として考える
私は、ゲームは英語の世界への「最高の入り口(ゲートウェイ)」だと考えています。
英語に対する「怖い」「つまらない」という壁を壊し、「英語って意外と面白いじゃん」と思わせてくれれば、ゲームの役割は9割達成です。
その先、本当に英語が好きになって「もっと知りたい」「話してみたい」と思った時に初めて、オンライン英会話や教室といった次のステップへ進めばいいのです。いきなりエベレストに登らせるのではなく、まずはハイキングコースから。ゲームはそのための「歩きやすい靴」のような存在です。
英語との距離を縮めるために、親ができること
最後に、英語が苦手なお子さんに対して、私たち親が今日からできる関わり方についてまとめておきます。
特別なスキルも、高額な教材も必要ありません。大切なのは、親の「マインドセット(心構え)」を少し変えることです。
結果を急がない関わり方
子育て全般に言えることですが、子供の成長曲線は一直線ではありません。
停滞しているように見えても、頭の中ではマグマのように知識や感覚が溜まっている時期があります(サイレントピリオド)。
「全然喋れるようにならないじゃない」と焦らず、種をまいて水をやり続ける時期だと割り切りましょう。数ヶ月、数年後にふとした瞬間に「あ、これ知ってる!」と芽が出る瞬間が必ず来ます。その時を信じて、今は「英語を嫌いにさせないこと」を最優先にしてください。
比較しない声かけ
「〇〇ちゃんはもう英検受かったんだって」
この一言は、子供のやる気を削ぐ最強の呪文です(苦笑)。
比較対象は常に「過去のお子さん」です。「前より英語の歌を口ずさむようになったね」「ゲームの英語メニューが読めるようになったね」と、小さな変化を見つけて伝えてあげてください。親が見てくれている、認めてくれているという安心感が、次への意欲になります。
環境づくりの考え方
「勉強しなさい」と言う代わりに、「自然と英語が目に入る環境」を用意するのが親の腕の見せ所です。
例えば、普段遊んでいるゲームの言語設定をたまに英語に変えてみる(戻し方も教えておく)、YouTubeを見る時に英語のアニメを候補に入れておく、リビングにさりげなく英語図鑑を置いておく。
強制するのではなく、生活動線の中に「英語の罠」を仕掛けておくようなイメージです(笑)。子供が自分から引っかかってくれたら成功! 押し付けるのではなく、選択肢の一つとして置いておくスタンスが、親子のバトルを減らすコツです。
選択肢の一つとして知っておきたい方法
もし、「ゲームが好き」「タブレットなら触る」というお子さんなら、市販のゲームソフトだけでなく、ゲーム要素を取り入れた英語アプリなどを試してみるのも一つの手です。
最近は、子供が夢中になるRPG仕立ての学習アプリや、マインクラフト(Minecraft)で英語を学べるスクールなど、「遊び」と「学び」をうまく融合させたサービスも増えています。
これらを「勉強させる道具」としてではなく、「新しい遊びの提案」としてお子さんに紹介してみてはいかがでしょうか。「これ、面白そうじゃない?」と親子で一緒に画面を覗き込むところから、新しい英語との付き合い方が始まるかもしれません。