家計と資産作り

【住宅ローンが残っていても家は売れる!】残債ありの売却方法と流れをママ目線で徹底解説

マイホームの購入は、家族にとって大きな夢の一つですよね。私も子どもたちの成長を思い描きながら、「この家でどんな思い出が作れるかな」なんてワクワクしたのを覚えています。

でも、子どもの進学や転勤、働き方の変化など、ライフステージが変わると「今の家のままで大丈夫かな?」「もう少し広い家に住み替えたいな…」なんて、ふと考える瞬間がありませんか?

そんなとき、真っ先に頭をよぎるのが住宅ローンの存在。「まだたくさんローンが残っているのに、家を売るなんてできるのかな…」「ローンの返済だけで手一杯で、売却費用なんて準備できないかも…」そんな不安な気持ち、すごくよく分かります。

もしかして、「住宅ローンが残っている家は売れない」なんて、思い込んでいませんか?

実は、住宅ローンが残っていても、家を売却する方法はちゃんとあるんです。

この記事では、住宅ローン返済中の家の売却に関する様々な疑問や不安を解消できるよう、基本的な知識から具体的な手続きの流れ、そして知っておきたい注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。今まさに悩んでいるあなたの、次の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。

住宅ローンが残っていても家を売れるの?

まず、一番気になる疑問からお答えしますね。結論から言うと、住宅ローンが残っていても家を売ることは『可能』です!

「え、本当?」と少しホッとした方もいるかもしれませんね。
ただし、誰でも簡単に売れるというわけではなく、そのためにはいくつか知っておくべき大切なルール(条件)があります。まずはここで、売却の基本をしっかり押さえておきましょう。

「残債あり=売却不可」とは限らない

「ローンが残っているのに売るなんて、金融機関に申し訳ない…」なんて感じる必要は全くありませんよ。家の売却は、家族の状況の変化に合わせて住まいを見直す、ごく自然で前向きな選択肢の一つです。

そもそも、家を売却できるかどうかのカギは、「売却代金でローンを全額返済できるか」という点にあります。

私たちが住宅ローンを組むとき、金融機関は購入した家を「担保」に取っています。この担保の権利を「抵当権(ていとうけん)」と呼びます。難しく聞こえますが、「万が一ローンが返せなくなった時は、この家を売って返済してもらいますね」という金融機関とのお約束のようなものです。

家を売るということは、この「抵当権」を外して、きれいな状態で新しい買主さんに引き渡す必要があるということ。そして、抵当権を外すための条件が、「住宅ローンをすべて返し終えること」なのです。

つまり、家の売却手続きの最終段階でローンを完済できれば、残債があっても全く問題なく売却できる、という仕組みなんですね。

売却して残債を完済できるケース

一番スムーズで理想的なのが、家の売却価格がローンの残高を上回るケースです。これを専門用語で「アンダーローン」と呼びます。

例えば、こんなイメージです。

家の売却価格 3,000万円
住宅ローンの残高 2,500万円
差額 +500万円

この場合、売却で得た3,000万円の中から2,500万円を金融機関に一括返済します。そうすると、手元に500万円が残りますよね。(※実際には仲介手数料などの諸費用がここから引かれます)

この残ったお金を、新しい家の購入資金の頭金にしたり、子どもの教育費のために貯蓄したり、家族旅行の費用に充てたりと、次のライフプランに活かすことができます。これなら、前向きな気持ちで住み替えを検討できますよね。

不足分は自己資金や新ローンで補える

「でも、うちの家がそんなに高く売れるか分からない…」と不安に思う方も多いはず。もし、家の売却価格がローン残高に届かなかったら、どうなるのでしょうか。

このような、売却価格がローン残高を下回る状態を「オーバーローン」と言います。

家の売却価格 2,800万円
住宅ローンの残高 3,000万円
差額 -200万円

この例だと、家を売っても200万円のローンが残ってしまいます。このままでは抵当権が外せないため、原則として売却はできません。

ではどうすれば良いのかというと、不足分の200万円を自分で用意して、売却代金と合わせてローンを完済する必要があるのです。その方法は主に2つあります。

  1. 自己資金(貯金など)で補う
    不足分を貯金などで用意できるのであれば、問題なく売却を進められます。これが最もシンプルな解決策です。
  2. 新しいローン(住み替えローン)で補う
    住み替えを検討している場合、不足分を「新しい家の住宅ローン」に上乗せして借り入れできる「住み替えローン」という商品があります。これは、今の家のローン残債と新しい家の購入費用をまとめて借りられる便利なローンです。
    ただし、借入額が大きくなるため、通常の住宅ローンよりも審査が厳しくなる傾向があります。年収や勤続年数など、条件によっては利用できない可能性も知っておきましょう。

いずれにせよ、まず「自分の家がいくらで売れそうか」を知らないことには、計画の立てようがありません。次のステップでは、具体的な売却の流れについて見ていきましょう。

ローン残債ありの不動産売却の流れ

「家が売れる可能性はあるって分かったけど、じゃあ具体的に何から始めたらいいの?」と思いますよね。住宅ローンのことが絡むと、手続きがすごく複雑に感じてしまうものです。

でも、大丈夫。一つひとつのステップを順番に見ていけば、全体の流れがきちんと理解できます。焦って不動産会社に駆け込む前に、まずは落ち着いて計画を立てていきましょう。

まずはローン残高と査定額の比較

売却活動を始める前の、一番大切な準備。それは「我が家のお金の状況」を正確に把握することです。具体的には、以下の2つの数字を調べてみましょう。

  1. 住宅ローンの残高はいくらか?
  2. 家はいくらで売れそうか?

まず、住宅ローンの残高ですが、これは金融機関から毎年送られてくる「残高証明書」や、契約時にもらった「返済予定表」で確認できます。もし手元に見当たらなければ、ローンを組んでいる金融機関に問い合わせれば教えてもらえますよ。

次に、家の査定額です。いきなり不動産会社に電話して「査定してください!」というのは、なんだか緊張しますよね。そんなときは、まずはインターネットで手軽にできる「机上査定(簡易査定)」がおすすめです。

これは、物件の住所や広さ、築年数などの簡単な情報を入力するだけで、おおよその売却価格をメールなどで教えてもらえるサービス。複数の不動産会社に一括で査定を依頼できるサイトもたくさんあるので、それを利用すれば、手間なく自宅の相場観を掴むことができます。

この2つの数字が出揃ったら、比べてみましょう。

  • 査定額 > ローン残高 → アンダーローン
    売却代金でローンを完済できる可能性が高いです。安心して売却活動に進めますね。
  • 査定額 < ローン残高 → オーバーローン
    不足分をどうやって用意するか、資金計画を立てる必要があります。

この比較をすることで、漠然としていた不安が具体的な課題に変わり、次のアクションが明確になります。

売却手続きの一般的なステップ

さて、自宅のお金の状況が把握できたら、いよいよ本格的な売却手続きに進みます。不動産売却は、だいたい以下のような流れで進んでいきます。

  1. 不動産会社選び・媒介契約
    査定を依頼した会社の中から、信頼できそうな担当者や会社を選び、「うちの家の売却をお願いします」という契約(媒介契約)を結びます。
  2. 売却活動の開始
    不動産会社がインターネット広告やチラシなどで家の情報を公開し、購入希望者を探してくれます。週末などには、家を見たいという人の「内覧」対応が必要になることも。
  3. 交渉・売買契約の締結
    購入希望者が見つかったら、価格や引き渡し時期などの条件を交渉します。条件がまとまったら、買主さんと正式な「売買契約」を結びます。
  4. 住宅ローンの完済・抵当権抹消
    物件の引き渡し日(決済日)に、買主さんから売却代金を受け取り、そのお金で金融機関に住宅ローンを全額返済します。同時に、司法書士の先生にお願いして抵当権の抹消手続きも行います。
  5. 物件の引き渡し(決済)
    鍵を買主さんに渡し、すべての手続きが完了です!

なんだか難しそうに見えるかもしれませんが、これらの手続きのほとんどは不動産会社がサポートしてくれます。私たちはその都度、必要な書類を準備したり、判断をしたりするのが主な役割になるので、安心してくださいね。

金融機関への相談が必要な場面

手続きは不動産会社が主導してくれますが、住宅ローンを組んでいる金融機関への連絡は、私たち自身で行う必要があります。では、どのタイミングで相談すれば良いのでしょうか?

主に、以下の2つの場面で連絡が必要になります。

  • 売買契約が成立したとき
    買主さんが見つかり、決済日(お金を受け取ってローンを完済する日)が決まったら、すぐに金融機関へ連絡し、「〇月〇日にローンを全額繰り上げ返済します」という旨を伝えます。金融機関側でも手続きの準備が必要なので、早めの連絡が大切です。
  • オーバーローンで「住み替えローン」を検討しているとき
    家の査定額がローン残高に届かず、住み替えローンの利用を考えている場合は、売却活動を始める前に金融機関へ相談することをおすすめします。
    「今の家を売却して、新しい家を買いたいのですが…」と正直に相談し、住み替えローンが組めそうか「事前審査」を受けておくと、資金計画の見通しが立ち、安心して売却活動に臨めます。

もし、今の時点で「ローンの返済が少し苦しい…」と感じている場合も、正直に金融機関へ相談することが解決への第一歩です。状況によっては、返済の負担を軽くする方法を一緒に考えてくれることもあります。一人で抱え込まず、まずは専門家に声をかけることが大切ですよ。

任意売却という選択肢を知っておこう

これまでは、売却代金や自己資金でローンを完済できるケースについてお話ししてきました。
でも、中には「どうしてもオーバーローンの不足分を用意できない」「すでに返済が苦しくなっている…」という、もっと切実な悩みを抱えている方もいるかもしれません。

そんな八方ふさがりの状況に陥ってしまったときに、知っておきたいのが「任意売却(にんいばいきゃく)」という方法です。
少し難しい言葉ですが、あなたと家族の生活を守るための大切な選択肢になる可能性があるので、ここで少し詳しく見ていきましょう。

任意売却と通常売却の違い

「任意売却」と聞くと、なんだかすごく特別なことのように感じますよね。「自己破産」や「差し押さえ」といった、少し怖い言葉が頭に浮かんで不安になるかもしれません。

でも、任意売却は、「住宅ローンの返済が難しくなったときに、ローンを借りている金融機関(債権者)の合意を得て、市場で家を売却する方法」のこと。つまり、金融機関との「話し合い」によって解決を目指す、ごく現実的な手続きの一つなんです。

一番の違いは、「売却してもローンが残ることを前提に、金融機関の許可を得て売却する」という点です。通常売却との違いを、表で見てみましょう。

項目 通常売却 任意売却
金融機関の合意 不要(ローン完済が前提) 必須
売却後のローン 残らない 残る(分割返済を交渉)
売却価格の決定権 売主(私たち)にある 金融機関の同意が必要
売却の主な理由 住み替え、転勤など自由 ローンの返済困難

このように、任意売却は金融機関の協力なしには進められません。しかし、返済が困難になった際の、現実的な解決策として用意されている制度なのです。

任意売却のメリット・デメリット

「ローンが残ったまま売れるなら助かる!」と思うかもしれませんが、もちろん良いことばかりではありません。メリットとデメリットの両方をきちんと理解した上で、自分にとって本当に必要な選択肢なのかを考えることが大切です。

【任意売却のメリット】

  • 市場価格に近い値段で売れる
    後で説明する「競売」と比べて、通常の売却に近い価格で売れる可能性が高いです。高く売れるほど、後に残るローンの額も少なくなります。
  • プライバシーが守られる
    売却活動は通常の売却と同じように行われるため、近所の人に事情を知られる心配がありません。
  • 費用の持ち出しが不要な場合が多い
    仲介手数料や登記費用などの諸費用は、売却代金から支払うことが認められるケースがほとんどです。手元にお金がなくても手続きを進めやすいのは、大きなメリットです。
  • 残ったローンの分割返済を交渉できる
    売却後に残ってしまったローンは、金融機関と相談の上、月々5,000円〜3万円程度など、無理のない範囲での分割返済に応じてもらえることが一般的です。

【任意売却のデメリット】

  • 信用情報に傷がつく(ブラックリスト)
    これが最大のデメリットです。ローンを滞納した事実が信用情報機関に登録されるため、その後5〜7年程度は新しいローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることが難しくなります。
  • 必ず成功するとは限らない
    金融機関の合意が得られなかったり、売却期間内に買い手が見つからなかったりすると、任意売却は成立しません。
  • 連帯保証人に影響が及ぶ可能性がある
    もし住宅ローンに連帯保証人がいる場合、売却後に残った債務の支払い義務が連帯保証人に移ります。事前に必ず相談し、理解を得ておく必要があります。

競売との違いと回避すべきリスク

任意売却を検討する状況で、絶対に避けたいのが「競売(きょうばい・けいばい)」です。
もし、住宅ローンの滞納が続き、金融機関からの連絡も無視していると、最終的には裁判所を通じて家が強制的に売却されてしまいます。これが競売です。

任意売却が金融機関との「話し合い」による解決策なら、競売は法律に基づいた「強制執行」であり、私たちの意思は全く反映されません。

競売には、以下のような大きなリスクが伴います。

  • 市場価格より大幅に安くなる
    競売での売却価格は、市場価格の5〜7割程度になってしまうのが一般的です。その結果、任意売却と比べてはるかに多くのローンが残ってしまいます。
  • 情報がすべて公開される
    物件の住所や写真、室内の状況などが新聞やインターネットで公開されます。プライバシーは全く守られません。
  • 強制的に立ち退きを迫られる
    家が落札されれば、新しい所有者からの一方的な都合で立ち退きを求められます。引っ越しの時期なども自分たちで決めることはできません。

このように、競売は精神的にも経済的にも負担が非常に大きいものです。もしローンの返済が本当に苦しいと感じたら、競売になってしまう前に、できるだけ早く金融機関や専門家に相談し、「任意売却」の道を探ることが、あなたと家族の未来を守るためにとても重要になります。

ローン返済が苦しいときに検討できる方法

任意売却や競売といった事態は避けたいけれど、今の住宅ローン返済が家計を圧迫していて、少し厳しい…。子どもの教育費や将来のことを考えると、もう少し月々の負担を軽くしたい、と感じている方も少なくないと思います。

実は、「家を売る」という決断をする前に、今の家に住み続けながら返済の負担を軽くする方法もいくつかあるんです。すぐに売却を考えるのではなく、まずはこういった選択肢がないか、一度立ち止まって検討してみるのも大切なステップですよ。

繰上げ返済や借り換えによる軽減

まず考えられるのが、毎月の返済額そのものを見直す方法です。特に、数年前に住宅ローンを組んだ方は、今より金利が高かった可能性もあります。

  • 一部繰り上げ返済(返済額軽減型)
    もし、少しでもまとまった貯蓄があるのなら、「一部繰り上げ返済」を検討してみましょう。繰り上げ返済には、返済期間を短くする「期間短縮型」と、月々の返済額を安くする「返済額軽減型」の2種類があります。
    目先の家計を楽にしたい場合は、この「返済額軽減型」が有効です。例えば、100万円を繰り上げ返済するだけでも、ローンの残高や金利によっては月々の返済額が数千円安くなるケースも。この数千円が、日々の心の余裕につながることもありますよね。
  • 住宅ローンの借り換え
    現在よりも金利の低い住宅ローンに乗り換えるのが「借り換え」です。特に、ローンの残高が1,000万円以上、残りの返済期間が10年以上、現在の金利との差が0.5%以上ある場合は、借り換えのメリットが出やすいと言われています。
    月々の返済額が1万円以上安くなるケースも珍しくなく、家計改善の効果は絶大です。ただし、借り換えには登記費用や保証料などの諸費用が数十万円かかる点には注意が必要。手数料を払ってでもメリットがあるかどうか、金融機関のサイトなどでしっかりシミュレーションしてみましょう。

リスケジュール(返済条件変更)の相談

「今は収入が減ってしまって、繰り上げ返済どころか、毎月の返済すら厳しい…」
病気や転職、会社の業績不振など、人生には予測できない事態が起こることもあります。そんな風に一時的に返済が困難になった場合に、まず相談したいのが「リスケジュール(返済条件の変更)」です。

これは、ローンを借りている金融機関に直接相談し、一時的に返済の条件を見直してもらうこと。例えば、以下のような対応を検討してもらえます。

  • 一定期間、月々の返済額を減らしてもらう(その分、総返済期間は延びる)
  • 一定期間、利息のみの支払いにしてもらう

これはあくまで、家計が回復するまでの一時的な措置であり、根本的な借金が減るわけではありません。むしろ、返済期間が延びることで総返済額は増えてしまう可能性があります。
しかし、目の前の返済に追われて滞納してしまい、信用情報に傷がついてしまうよりは、ずっと健全な方法です。本当に困ったときは一人で抱え込まず、「返済が厳しくなってきたのですが…」と正直に金融機関に相談することが、最悪の事態を避けるための第一歩になります。

売却以外の生活再建の選択肢

「今の家には愛着があるし、子どもたちの学区も変えたくない。できれば、このまま住み続けたい…」
そう願うのは、とても自然な気持ちですよね。もし、まとまった資金が必要だけれど家は手放したくない、という場合には、こんな選択肢もあります。

  • リースバック
    これは、一度自宅を不動産会社などに売却し、その後は賃貸契約を結んで家賃を払いながら、そのまま今の家に住み続けるという方法です。
    売却によってまとまった資金を手にすることができ、引っ越しの必要もありません。将来、資金に余裕ができれば、その家を買い戻せる「買い戻し特約」が付いている場合もあります。
    ただし、売却価格は通常の相場より少し安くなる傾向があることや、当然ながら毎月の家賃が発生する点には注意が必要です。
  • リバースモーゲージ
    主にシニア層(60歳や65歳以上など)を対象とした制度ですが、自宅を担保にお金を借り、契約者が亡くなったときに家を売却するなどして一括返済する仕組みです。生きている間は利息のみを返済していくケースが多く、年金生活の足しにすることができます。
    利用できる年齢に制限があるため誰でも使えるわけではありませんが、知識として知っておくと良いかもしれません。

家を売ることは、いつでもできる最終手段。その前に、今の生活を守りながら状況を改善できる方法がないか、広い視野で情報を集めてみることが大切です。

損をしない不動産査定の活用方法

ここまで、住宅ローン返済中の家の売却に関する様々な選択肢を見てきました。どの方法を選ぶにしても、あるいは「まだ売らない」という判断をするにしても、すべての計画のスタートラインになるのが「自分の家が今、いくらで売れるのか」という客観的な価値を知ることです。

家の価値は、いわば今後のライフプランを立てるための「コンパス」のようなもの。
ここでは、そのコンパスを正しく手に入れるために、損をしない不動産査定の賢い活用法についてお伝えしますね。

複数社に査定を依頼する重要性

「不動産査定って、なんだか家の成績表をつけられるみたいでドキドキする…」「何社にもいちいち連絡するのって、正直ちょっと面倒だな」なんて思う気持ち、すごくよく分かります。

でも、少しだけ手間をかけてでも、査定は必ず複数の不動産会社に依頼することを強くおすすめします。なぜなら、理由は大きく3つあるんです。

  1. 会社によって査定額が違うから
    実は、不動産の査定額はどの会社に頼んでも同じ、というわけではありません。会社ごとに得意なエリアや物件の種類(マンションか戸建てか、など)が違うため、査定額に数十万円、ときには数百万円もの差がつくことも珍しくないのです。もし1社だけの査定額を鵜呑みにしてしまうと、本当はもっと高く売れたはずの家を安く手放してしまう…なんてことにもなりかねません。
  2. 自宅の「適正な相場」が分かるから
    複数の会社から査定結果を集めて比べることで、「だいたい、うちの家はこのくらいの価格帯なんだな」という客観的な相場観が掴めます。これが、今後の資金計画を立てる上での重要な基準になります。
  3. 信頼できる担当者を見極めるため
    査定は、不動産会社との最初の接点。査定額の根拠をきちんと説明してくれるか、こちらの質問に丁寧に答えてくれるか、親身に相談に乗ってくれそうか…。金額だけでなく、担当者の人柄や相性を見極める絶好のチャンスです。大切なマイホームの売却を任せるパートナー選びの場だと考えましょう。

最近では、一度の入力で複数の会社にまとめて査定依頼ができる「不動産一括査定サイト」がとても便利です。忙しいママでも、家事や育児の合間にスマホで簡単に申し込めるので、ぜひ活用してみてください。

高額査定と安値査定の見分け方

複数の会社から査定結果が届くと、やっぱり一番高い金額を提示してくれた会社に心が惹かれますよね。「高く売れるなら、そこにお願いしたい!」と思うのは当然です。

でも、ここで少しだけ冷静になってみてください。その高額査定、本当に信じても大丈夫でしょうか?

  • 高すぎる査定額の裏側
    中には、まず媒介契約を結びたいがために、意図的に相場より高い査定額を提示してくる会社も存在します。そして契約後に「広告を出しても反響がないので、値下げしましょう」と提案してくるのです。これでは、売却活動が長引くだけでなく、最終的には相場並みか、それ以下の価格でしか売れなかった、という結果になりかねません。
  • 安すぎる査定額の裏側
    逆に、査定額が低すぎる場合も注意が必要です。そのエリアの販売実績が少なく相場観に自信がないか、あるいは「この金額ならすぐに売れるだろう」と、会社の利益(仲介手数料)を優先して、早く確実に売れるであろう安い価格を提示している可能性も考えられます。

大切なのは、提示された金額の高さ・安さだけで判断しないこと。「なぜ、この査定額になったのですか?」と質問し、その根拠(最近の取引事例、家のプラス評価点・マイナス評価点など)を、あなたが納得できるように分かりやすく説明してくれる会社を選びましょう。

「今売る」か「待つ」かの判断ポイント

査定額が分かると、「思ったより高い!今が売り時かも?」「うーん、もう少し待てばもっと上がるのかな…」と、新たな迷いが出てくるかもしれません。売却のタイミングは本当に悩みますよね。

そんなときは、以下の3つのポイントを整理してみましょう。

  1. 不動産市場の動向
    不動産価格は、景気や住宅ローン金利の動き、近隣での大規模な開発計画など、様々な要因で変動します。査定をしてくれた不動産会社の担当者に、「このエリアの今後の価格はどうなりそうですか?」とプロの視点からの見通しを聞いてみるのがおすすめです。
  2. 自分たちのライフプラン
    「子どもが小学校に上がるまでに」「夫の転勤が決まったから、半年以内に」など、ご家庭の事情は様々。市場の動向はもちろん大切ですが、それに振り回されて家族の計画が崩れてしまっては本末転倒です。売却の最大の目的は、家族がより良く暮らすためだということを忘れないようにしましょう。
  3. 築年数と資産価値の関係
    一般的に、木造戸建ては築20年、マンションは築25年を過ぎると、建物の価値の下落スピードが緩やかになる傾向があると言われています。もし築年数がかなり経っている場合は、数ヶ月〜1年待っても査定額が大きく変わらない可能性も。焦って売る必要がないケースもあります。

最終的には、これらの情報を総合的に見て、「自分たちのタイミング」と「市場のタイミング」が重なるベストな時期を探していくことになります。不動産会社を、そのための良き相談相手として活用してくださいね。

住宅ローン返済中の売却で気をつける費用と注意点

売却の計画もいよいよ大詰め。不動産会社選びも終わり、具体的なステップが見えてくると、少し安心しますよね。

でも、最後にとても大切なお金の話をさせてください。
せっかく希望の価格で家が売れても、「あれ?思ったより手元にお金が残らない…」なんてことになったら悲しいですよね。そうならないために、家を売るときに「出ていくお金(諸費用や税金)」と、特に住み替えの際に気をつけたい「リスク」について、ここでしっかり確認しておきましょう。

売却時の諸費用(仲介手数料・抵当権抹消費用)

家を売るというと、お金が入ってくるイメージが強いですが、実は支払わなければならない費用もいくつかあります。代表的なものは以下の通りです。

  • 仲介手数料
    売却をお願いした不動産会社に支払う成功報酬です。売買契約が成立したときに発生し、これが諸費用の中で最も大きな割合を占めます。法律で上限額が決められており、一般的には「売却価格の3% + 6万円 + 消費税」が目安です。
  • 抵当権抹消費用
    住宅ローンを完済した証として、家の登記簿から抵当権の記録を消すための手続き費用です。司法書士への報酬と、登録免許税という税金がかかり、合わせて数万円程度見ておくと良いでしょう。
  • 印紙税
    売買契約書に貼る印紙の代金です。売却価格によって金額が変わり、例えば1,000万円超〜5,000万円以下の物件なら1万円の印紙が必要になります(※軽減措置適用後の税額)。
  • その他の費用
    この他にも、状況に応じてハウスクリーニング代や、戸建てで土地の境界が不明確な場合の測量費、そしてもちろん引っ越し費用などもかかってきます。

これらの諸費用は、全部合わせると一般的に「売却価格の4%〜6%」が目安だと言われています。3,000万円で家が売れたとしたら、120万円〜180万円くらいは見ておく必要がある、ということですね。売却代金から支払うことができますが、この金額をあらかじめ念頭に置いて資金計画を立てることが大切です。

税金や繰上げ返済手数料

諸費用とは別に、税金や手数料についても確認しておきましょう。

  • 譲渡所得税・住民税
    家を売って利益(譲渡所得)が出た場合にのみ、かかる税金です。利益の計算は少し複雑ですが、簡単に言うと「売却価格」から「家を買ったときの金額(取得費)」と「売るためにかかった費用(譲渡費用)」を引いて計算します。
    でも、安心してください。自分が住んでいた家(マイホーム)を売る場合、利益が出ても最高3,000万円までなら税金がかからなくなる「3,000万円の特別控除」という非常に強力な特例があります。ほとんどのケースでは、この特例のおかげで税金がかかることはありません。ただし、適用にはいくつかの条件があるので、不動産会社の担当者に確認しておくとより安心です。
  • 繰り上げ返済手数料
    住宅ローンを完済するとき、金融機関によっては「一括繰り上げ返済手数料」がかかる場合があります。インターネット銀行などでは無料のところも多いですが、金融機関や契約内容によっては数千円〜数万円かかることも。事前にご自身のローン契約を確認しておくことをおすすめします。

二重ローンのリスクを避けるための計画

今の家を売って、新しい家に住み替える。そんなときに一番避けたいのが「二重ローン(ダブルローン)」のリスクです。今の家のローン返済が終わらないうちに、新しい家のローン返済が始まってしまう…。家計への負担を考えると、想像しただけでもぞっとしますよね。

このリスクを避けるには、住み替えの進め方が重要になります。

  1. 「売り先行」
    今の家を売却してから、新しい家を探して購入する方法。
    【メリット】売却価格が確定しているので、資金計画が立てやすい。二重ローンのリスクがない。
    【デメリット】売却から新居への入居までに時間が空くと、一時的に賃貸などで「仮住まい」する必要があり、引っ越しが2回になったり家賃が発生したりする。
  2. 「買い先行」
    新しい家を購入してから、今の家を売却する方法。
    【メリット】希望の物件をじっくり探せる。仮住まいの必要がない。
    【デメリット】今の家がいつ・いくらで売れるか不確定なため、最悪の場合、二重ローン状態に陥るリスクがある。

どちらにも一長一短がありますが、自己資金に十分な余裕がない場合は、家計のリスクを最小限に抑えられる「売り先行」で進めるのが基本です。
不動産会社の担当者と「いつまでに売って、いつ頃に新居を決めたい」といったスケジュールを綿密に相談し、無理のない計画を立てることが、住み替えを成功させる一番の秘訣ですよ。

まとめ

住宅ローンが残っている家の売却は、不安なことや分からないことだらけかもしれません。でも、一つひとつ知識を整理していけば、決して乗り越えられない壁ではありません。

最後に、この記事の大切なポイントを振り返ってみましょう。

  • 住宅ローンが残っていても、売却代金や自己資金で完済できれば家は売却可能。
  • 返済が苦しい場合も、任意売却や借り換え、リスケジュールなど、諦める前に検討できる選択肢がたくさんある。
  • 売却を考え始めたら、まずは複数社に査定を依頼して「我が家の価値」を知り、信頼できる不動産会社を見つけることが成功への第一歩。
  • 売却には諸費用や税金がかかることを忘れずに。事前にしっかり資金計画を立てて、後悔のないように進めましょう。

家の売却は、ただの不動産取引ではありません。家族の歴史が詰まった大切な場所を手放し、新しい未来へと踏み出すための大きな一歩です。

不安なときは一人で抱え込まず、専門家である不動産会社や金融機関に相談しながら、あなたの家族にとって最善の道を見つけてくださいね。この記事が、そのためのささやかなお手伝いになれば、とても嬉しいです。

-家計と資産作り